01 大府の家

※過去担当作品
40代夫婦と猫が暮らす住宅である. 
建築当時は30代夫婦も,7年経ち,住宅もさらに風合いを増している. 敷地は名古屋近郊の高台にある.周囲は昔からの住宅地であり,その周りはブドウ畑が広がる緑豊かな環境である.

夫の要望は,庭を最大限確保すること,
妻の要望は,陽が昇っているときは存分に光を浴びて,陽が沈んだら落ち着いて過ごすといった具合に,人間の身体のサイクルにあった住まいにして欲しいとのことであった.

建物はL型の配置とし,アプローチと兼ねて庭を広く設けている.庭を眺めながら歩き,玄関までの引きを長く確保することで,住宅内部への期待感や高揚感を高める効果もある.玄関はガラス張りとし,背後の隣地の緑をも借景にしている.アプローチで感じた緑の空気感はそのまま土間である玄関に入り込み,内部へ引き込まれる.

内部構成は,1.2階に居室,土間玄関を挟んだ離れに,親を引き取ったり,多目的に使える個室を配置した.1階はリビングやダイニングの一体的な広々とした空間であり,2階は主寝室とオープンスペースである.回遊性があり,視界や風の抜けを意識した計画は,そこで暮らす日々を心地よく大らかに包み込む.

内部仕上げは,経年変化の味わいを増すよう,自然素材を多用している. 床は無垢のナラ材,壁は珪藻土,構造材表しの天井. 外部建具はアルミや木製サッシであるが,土間玄関のみ通り庭の雰囲気を生かすために造作の木製建具としている.
半外部のような玄関は,普段の居住空間と離れの個室をさりげなくわける.ほんの数歩の空間が,気持ちを切り替える開放的な場所となっている.内外のすべての壁は同色とし,内外の連続性を意識している.さりげない庭が,囲い庭でもないに関わらず,内の延長であるかのような印象を与えている.
夜は数カ所のスポットライトだけで過ごす.濃い色味の木部と味わい深い珪藻土の壁が,日々の仕事や生活の疲れをときほぐし,気持ちをゆったりと沈めてゆく.

外観は,土色の塗り壁とし,木部を大胆に現している.まるで地面から生え伸びてきたような佇まいを見せる.随所に設けた開口部からは敷地内の2種類の庭だけでなく,隣家の緑,遠くのブドウ畑が眺められる.落ち着いた内部空間に緑の匂い溢れた住宅となった.


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【概要】
用途:専用住宅
敷地面積:230.67㎡
建築面積:79.92㎡
延床面積:113.45㎡
構造:木造在来軸組工法
階数:2階
設計期間:2004.05~2004.11
施工期間:2004.12~2005.04
設計監理:オカダ建築設計事務所 担当 / 谷口みのり
施工:株式会社オカダ



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